サービス企画経験者が市場のスキル需要と自身の強みを結びつける専門分野の選び方
キャリアの岐路に立つサービス企画経験者の方へ
ITベンチャーでサービス企画のキャリアを7年ほど積まれた方の中には、現在のキャリアパスに限界を感じたり、さらに市場価値の高い人材となるために専門性を深めたいと考えたりしている方もいらっしゃるかもしれません。特に近年、ジョブ型雇用への注目が高まる中で、特定の専門スキルを持つ人材への需要が増しています。
自身のスキル軸を明確にし、集中的に習得することで、キャリアの展望を大きく広げることが可能です。しかし、「一体どんな専門分野を目指すべきなのか」「自分のこれまでの経験はどの分野で活かせるのだろうか」「何から手を付ければ良いのか」と迷ってしまうこともあるでしょう。
本記事では、サービス企画経験を持つ方が、自身の強みと市場のスキル需要を効果的に結びつけ、自身のキャリアを再設計するための専門分野の選び方について、具体的なステップとともに解説します。
ジョブ型雇用における専門性の意義
まず、ジョブ型雇用においてなぜ専門性が重視されるのかを理解することが重要です。ジョブ型雇用では、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」で定義された特定の役割や職務内容に対して人材がアサインされます。そのため、そのジョブを遂行するために必要な専門スキルや知識を高いレベルで有しているかが評価の基準となります。
サービス企画の経験で培われた、市場やユーザーのニーズを捉える力、複雑な要素を整理し要件に落とし込む力、多様な関係者を巻き込みプロジェクトを推進する力などは非常に価値のある汎用的なスキルです。これに加え、特定の技術領域、ビジネス領域、あるいは分析手法などに深い専門性を持つことで、特定のジョブに対してより高いフィットを示し、結果として市場価値を高めることに繋がります。
専門分野選びで「迷い」が生じる背景
数多くのIT関連の専門分野が存在する中で、自分に合った分野を見つけるのは容易ではありません。迷いの背景には、以下のような要因があると考えられます。
- 選択肢の多様性: データサイエンス、AI/機械学習、クラウドエンジニアリング、サイバーセキュリティ、特定のプログラミング言語専門家、高度なプロダクトマネジメント、UXリサーチ専門家など、魅力的な専門分野は多岐にわたります。
- 自身のスキルの見えにくさ: これまでの経験で自然と身についたスキルや得意なことが、どのような専門分野に繋がるのか、客観的に把握するのが難しい場合があります。
- 市場トレンドの変動: 技術の進化やビジネス環境の変化により、需要の高いスキルや専門分野は常に変化しています。どの分野に将来性があるのかを見極めるのが困難です。
これらの迷いを解消し、自身に最適な専門分野を見つけるためには、体系的なアプローチが必要です。
専門分野選びのステップ1:徹底した自己分析とスキル棚卸し
キャリア再設計の第一歩は、自身の「現在地」を正確に把握することです。サービス企画の経験を通じて、どのようなスキルを磨き、何に興味を持ち、何を得意としてきたのかを深く掘り下げます。
- 過去の業務内容の具体化:
- 関わったサービスやプロジェクトの内容、自身の役割は何でしたか?
- どのような課題解決に取り組みましたか? その際、どのようなスキル(分析、要件定義、ドキュメンテーション、コミュニケーション、調整など)を使用しましたか?
- 特に印象に残っている成功体験や困難だった経験は何ですか? そこから何を学びましたか?
- 保有スキルの詳細な洗い出し:
- 企画立案、市場調査、競合分析、ユーザーインタビュー、データ分析(アクセス解析ツール、SQLなど)、要件定義、仕様作成、開発ディレクション、進捗管理、効果測定、プレゼンテーションなど、具体的なスキルをリストアップします。
- それぞれのスキルについて、どの程度の経験や自信があるかを自己評価してみます(例: 基本的なレベル、実務で問題なく使えるレベル、専門家と呼べるレベル)。
- 興味・関心、価値観の探求:
- 仕事をする上で、どのような瞬間にやりがいを感じますか?
- どのような分野や技術に自然と惹かれますか? 休日などに個人的に情報収集しているテーマはありますか?
- 将来的にどのような働き方をしたいですか? (例: 特定領域の技術を極めたい、マネジメントに関わりたい、ビジネス戦略に深く関与したいなど)
- どのような企業文化や働く環境が自分に合っていると感じますか?
この自己分析を通じて、自身の「強み」や「核となる興味」がどこにあるのかを明確にすることが、専門分野選びの確かな土台となります。サービス企画で培われたユーザー視点やビジネス理解は、多くの専門分野で大きな強みとなり得ます。
専門分野選びのステップ2:市場のスキル需要を把握する
次に、外の世界、つまり現在のIT・Web業界でどのような専門スキルが求められているのかを把握します。自身の興味や強みと照らし合わせるための「候補リスト」を作成するイメージです。
- 転職サイトや企業の採用ページを調査する:
- 主要な転職サイトで、興味のあるキーワード(例: データサイエンティスト、プロダクトマネージャー、SRE、機械学習エンジニアなど)で検索し、どのような企業が、どのような「ジョブディスクリプション」で募集しているかを確認します。
- 特にジョブ型雇用を導入している、あるいはそれに近い採用を行っている企業の採用ページを詳細に読み込みます。求められる経験年数、必須スキル、歓迎スキルなどを具体的にリストアップします。
- 業界レポートや技術トレンド情報を参考にする:
- IT業界のトレンドに関する記事、技術ブログ、カンファレンスの発表資料などを参考に、今後需要が高まりそうな技術や専門分野について情報を収集します。
- 特に、サービス企画の経験が活かせる、あるいは連携が深い分野(データ分析、プロダクトグロース、AI活用、SRE/DevOpsによるサービス安定化など)に注目します。
- コミュニティや勉強会に参加する:
- 関心のある技術分野や職種のオンライン/オフラインコミュニティに参加し、現場の生の声や最新情報を得ることも有効です。
このステップでは、現時点で完全に理解できなくても構いません。自身のアンテナに引っかかった分野、あるいは自身のスキルセットの一部が関連しそうな分野を広くリストアップすることが目的です。
専門分野選びのステップ3:自身の強みと市場需要を結びつける
自己分析で洗い出した自身の強み・興味・価値観と、市場調査でリストアップした需要の高い専門分野候補を照らし合わせます。これが最も重要なステップです。
- 候補分野と自身のスキルのマッチング:
- リストアップした各専門分野について、「自身のどのような経験やスキルが活かせるか?」「特に興味を持てる部分はどこか?」を具体的に検討します。
- 例:サービス企画でデータ分析ツールを使った経験があれば、「データサイエンティスト」や「データエンジニア」の候補に。ユーザーニーズの深掘りが得意なら「UXリサーチャー」。事業と技術の橋渡しに興味があれば「プロダクトマネージャー(技術寄り)」や「SRE」など。
- サービス企画の経験は、単に企画を作るだけでなく、ユーザーを理解し、ビジネスの視点から技術やデータを活用する視点を持っています。これは、多くの専門分野で「ビジネス理解のある技術専門家」として高く評価される素地となります。
- 候補分野の比較検討:
- 複数の候補がある場合、それぞれの分野の「将来性(需要の持続性)」「自身の興味との合致度」「求められるスキル習得の難易度・期間」「キャリアパスの多様性」などを比較検討します。
- 現時点でのスキルギャップが大きい分野でも、自身の強い興味や、サービス企画経験で培った基礎能力が活かせる見込みがあれば、チャレンジする価値はあります。
- 優先順位付けと絞り込み:
- 比較検討の結果を踏まえ、最も自身の強みや興味が活かせそうで、かつ市場からの需要も期待できる専門分野を1〜2つに絞り込みます。この段階で完璧に一つに絞れなくても問題ありません。
専門分野を絞り込むための具体的なアクション
候補が絞れてきたら、さらに解像度を上げるために具体的な行動を起こします。
- 関連情報の深掘り: 絞り込んだ専門分野に関する技術ブログ、専門書籍、オンラインコースのシラバスなどを詳細に読み込み、具体的な業務内容や必要なスキルセットへの理解を深めます。
- 入門的な学習を試す: オンライン学習プラットフォームで、その分野の入門コースやキャッチアップ向けの講座を受講してみます。実際に手を動かしてみることで、その分野が本当に自分に合うか、興味を持続できるかを確認できます。
- その分野で働くプロに話を聞く(ネットワーキング): 可能であれば、その専門分野で現在活躍している方にカジュアルに話を聞く機会を得ます。実際の仕事内容、キャリアパス、必要なスキルなど、リアルな情報を得ることで、自身の選択の妥当性を検証できます。
専門分野確定後のステップへ
専門分野が明確になったら、いよいよ具体的なスキル習得のロードマップ策定に移ります。必要なスキルセットをさらに具体的に特定し、最適な学習方法やリソースを選び、計画的に学習を進めていくことになります。このステップは、キャリア再設計の次の重要なフェーズです。
まとめ
サービス企画経験を持つ方がジョブ型雇用に対応し、市場価値を高めるためには、自身の専門分野を明確にすることが不可欠です。そのためには、自身の経験・スキル・興味を深く理解する自己分析と、市場のニーズを正確に把握する調査の両方が必要です。そして、その二つを結びつけることで、自身にとって最適な専門分野を見つけることができます。
専門分野選びは、キャリア再設計における迷いを解消し、次に取るべき具体的な行動を明らかにするための重要なプロセスです。焦らず、着実に、自身のキャリアの可能性を最大限に引き出せる専門分野を見つけてください。この一歩が、市場価値の高い人材への確かな道筋を拓くことになるでしょう。